佐藤 拓雄
2025/06/26
きょうから新しいお題、「梅雨の過ごし方」です。
いやこれ、実に難しいお題です。
「梅雨の過ごし方」、特に全くないです。すみません。
梅雨で雨が降ったって仕事に行かなければなりませんし、日常生活はいつも通り。天気が気になるのは確かですが、それは一年中同じことですし。
ですので少々話を変えます。
「梅雨」という言葉、皆さんはどういうアクセントで話しますか?
アクセントというのは、日本語の場合、音の上がり下がり・高低のことです(厳密には「東京式」というようですが、それはひとまず置いておきます)。
この時点で読むのが面倒くさいと思われているだろうなあと思いますが、続けます。
先日、フジ系列のアナウンサーの先輩から、注意喚起の指摘がありました。
「『梅雨』のアクセントは平板のみです」と。
「平板」というのは、専門用語なので忘れていただいても構いませんが、例えば「梅雨が」と言うとすると、「つ」が低くて、「ゆ」「が」が高い(同じ高さ)アクセントになることです。一つ一つの音の高さで示せば、「低高高」。
別の単語で、「豚が」を例に挙げればわかるでしょうか。
「梅雨が」は、この「豚が」と同じアクセントです。
それが、このところ、「梅雨が」を「低高低」で言う人が増えている、というのが先輩からの指摘です。これも別の単語で言えば「犬が」と同じアクセントになってしまっているのです。
確かにそうなんです。私もあれ?と思うことが増えていたところでした。
アナウンサーでない人が、この程度の差を気にしているわけはありませんし、その必要もありませんが、私たちアナウンサーは、アクセントを常に気にしていなければなりません。
というか、何年もアナウンサーをやっていると、気にしなくても常に気になってしまう「職業病」のようなものですが、ともかく、こういう違いをいつも気にしていないと、究極的には言葉が伝わらなくなるからで、アナウンサーがアクセントをなおざりにしたら、それは職業放棄だと私は思っています。
かつての大先輩の中には、アクセント辞典の覚えたページは食べたとかいう伝説のある人や、そこまでではなくても肌身離さず持ち歩いて覚えたとか、アクセントを大切にしていたエピソードをたくさん聞きます。時代にそぐわないと笑わば笑え。でも私は、プロフェッショナルの一つの手本だと思っています。
今はアクセント辞典もアプリ版があり、重たい辞典を持ち歩かなくてもよいうえに、発音も音声が出るという便利な時代ですが、伝説の先輩たちのようにアクセントを常に気にして大切にするアナウンサーが減っているように見えます。
「梅雨」なんて、間違いそうもないアクセントの間違いが増えているというのは、単に言葉の変化ということもできるかもしれませんが、アナウンサーに限っては、職業意識の問題だと言ったら言い過ぎでしょうか。
【写真】は、梅雨の晴れ間の仙台駅。この日は猛暑日寸前という暑さでした。
明日は、西ノ入アナウンサーです。